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病みそこないのなんとか

 先月は忙しかった。
 新曲をまとめあぐね、旧曲の編集に行き詰まっているうちに体調も翳る。病院で熱を押さえ込み喉を調整。うがいができない体質の私はすぐにウィルスを吸い込んでしまう。注射でアレルギーを起こすのでワクチン接種もなかなかできない。身体も皮膚も弱い自分が、よくタトゥインクだのサージカルステンレスなどを受肉しているものだと思う。
 タトゥなんかしていると、そもそも病院に居るのが恥ずかしくて後ろめたい。そんなことしといて都合いいときだけ病院にくるのかよ、みたいな眼で見られても仕方ない。レントゲンなどのときにボディピアス(自力でははずせない)が面倒なのもネックだ。
 …かかりつけの病院は私に慣れているのでありがたい。
 雨の東京から戻ってきた翌日、今度は出講先の大学でぎっくり腰を起こしてこの一週間ガタガタだった。休講は出す(私の休講は超レアだ)し、プログラム書きや資料作りだけでなく読書にも事欠く日々。
 そんな服とハイヒールでものすごい重量の荷物を持って走り回ることに無理がある、と言われればそのとおりだし、姿勢の悪さも頸椎がずれていることも、背骨が歪んでいることも知っている。大学から社会人初期にかけて毎日オケでマンドリン弾いていたクセで、座ったら足を組まずにいられない。書斎は和室で横座りだし、最悪の姿勢になる…。
 でもハイヒールは女のモビルスーツだし、本や譜面満載のドルチェ&ガッバーナの巨大鞄は武器で手放せない。オフの日や旅先では武装解除するし、そのメリハリでフリーターのアプレ人生のリズムは制御されている。
 ついてないなあと思うけれど、それも沸点をこえると楽しくなる。無責任に見ていて面白いコだなあと思うのだ。とことんツキにみはなされて、次から次に襲ってくる突発事態に翻弄されて、必死になってて。客観的に観察する分には面白い見世物ではないか。
 そんなこんなで、むりやり明日は行きつけの整体にいくのである…。
 私の身体状態に呆れながらも「無理をしないで」とか「よく休んで」とかいう類いのおざなりなおざりのことを言わずに、ただ黙々となんとかしてくれるので好きだ。
 「無理しないで」と心配されるのは素直に嬉しい。
 だが、あなたは無理せずに今まで生きてきたんですか。
無理せずに生きてこられた人生ももしかしたらあるのかもしれない。でも、そんな人生楽しいですか?
 私はそうは思わない。リスクはあっても、時に壊れても、無理を無理と思わない人間だけが遠くへ行けるとおもう。
 無理をしないことが無理であるような、そんな人生が、いい。

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