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final

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(撮影許可・Fさん撮影)
画像の出し方がいまいちあやふや…。
さて、このブログを使いあぐねているが、まあ実験的に愚痴でもいおう。
某大のライブツアー(半期の講義)の最終日。
学期末日にはコスプレ指定(何らかの制服でご来場ください、とか)をしてきたが、年々それも厳しくなる。
ドレスコードで色指定(黒いものを身につけてきてください、とか)や柄指定(ストライプかボーダーでどうぞみたいな)などの軽微なものに変えても、最近では客席はなかなかノってくれない。必死でお願いしても、揺さぶっても、である。結果、ニシカワタカノリの完全コスプレとかで平然と学期末のライブ(講義)をする私ひとりが浮き浮きのアホアホになって、汗だくになって、恥ずかしい思いをして、当局には睨まれて、平服の客席に携帯で写真だけ撮られて、ネット上に晒されて、ばらまかれて、笑われて…。私だけならいいが、ノリ良く素敵コスプレしてくれたマネージャーさんや常連学生さんがひそひそ言われたり盗撮(許可のない撮影は盗撮である)されたり、がこたえた。もうイヤだ、やめよう、リスクばかりでかくて、何もええことない!というのがここ数年の本音だった。
かつて芸術系大学のノリはよかった。揺さぶる必要もなかった。むしろ客席の熱意(最終日のコスチュームに対しての、ね。笑)に私が揺さぶられて真剣に悩むほどだった。下手なコスプレをすれば客席よりも私が沈んでしまう、コスプレイヤーの意地にかけて勝負だぜ(キッ!)ってなった。講義時間前に大学のトイレが更衣や仕込みをする学生で全部埋まっても「ああ、今日はともちゃんのファイナルなんですねー。がんばって!」と他のセンセイも助手も職員さんもにこやかだった。携帯電話のカメラ機能やデジカメや、ツイッターやSNSがまださして普及していない時代である。ライブは生身で、その場にいる肉体たちがみんなでつくって互いに楽しむもの。通信制学部のたった6日のスクーリングでさえも、最終日の客席は真剣に楽しんでつきあってくれた。もちろん、衣装がどうであれきちんと講義は行う。ファイナルの日の拍手と歓声に涙腺が刺激されるのをこらえたこともある。
最後にそれがあって盛り上がるためにも、学期中なんとなく講義を聴く士気があがる。ハレとケ。半年間一生懸命学んで、一生懸命伝えたあとではっちゃけるカーニバル。
それが昨今は講義最終日なんていうのは、試験について何か言うに違いないからという期待でいつもより学生が多い。ドレスコードなどもちろん無視。理由は「恥ずかしい」「忘れてた」「まわりの目が気になる」「服をもってない」…。まわりの目は異様に気にするのに、私の目は気にされてない疎外感。服など買う必要はない、その辺であるものでなんとか工夫できるレベルにしていても「無理難題」と言われる。「コスプレしなあかんらしい」…そんなことひとことも言ってない。おおっぴらにいつもと違う装いをしてよい口実がそこにあるのだから利用すれば楽しいよ、自分も知らない自分にこんにちわできるかもよ。
挙げ句の果て、当日堂々と異装してきた学生を横目に「こんなことならすればよかった」「すごくかわいかった」「みんな楽しそうだった」「もっと派手なかっこうでも余裕だった」とか言うのだ。そりゃそうだ、いじいじせずに乗っかったコだけがかわいくて楽しくて眩しいのである。
そして、見るより先に携帯を取り出す。携帯画面越しに見る風景は綺麗ですか? 記憶より記録とりますか?
そんなこんなで悩んだのだが、大勢だの風潮だのに屈してそれを楽しみにしているお客さんを踏みにじることは、敗北であり裏切りである。
ドレスコード「アニマル」…三週間も前に告知をする。なんかかんか作ったり、見つけたり、借りたりするには十分だろう。本来そこから自由に解釈工夫してくれればいいのだが、バリエーション例もいちおう提案する。「〜じゃだめですか」「〜はアニマルに入りますか」「〜はおかしいですか」と不安そうな質問が相次ぐのも最近の傾向。だめじゃないし、なんでもありだし、おかしくないってあれほど言うておろうが。なぜそんなに許可と認容をあらかじめ担保せねばならぬのだろう。
当日未明、自爪を豹柄に細工しながら私は不安でたまらなくなる。こんなことして、さらにこの年で猫耳まで作って、また客席は完全スルーなのか。
電車の中でも事務局でも講師控え室でも「見て見ぬふり」をひしひしと感じながら(まあ、豹柄で猫耳だもんな)、さっさと会場の教室に行ってみる。ぞろぞろと普段そのまんまの学生が会場に吸い込まれていく。やはりか。地味だな…うん。
もちろん中には猫耳フルメイドだのフル執事だの完全着ぐるみだのボディペイントだの河童だの馬だの白鳥だのバニーガールだの鬼だの尻尾付きだののツワモノもいる(愛してます!)。
そうこうしているうちに少しだけ変化がおこる。緩慢に着席した学生たちがそうしたツワモノを遠巻きに眺め、まわりをきょろきょろ見回しながら、おずおず何かしら取り出して装着しはじめる。多くは、ディズニーランドで売ってるような耳付きカチューシャだが、それでいい。
おお、ちょっとだけ和んだですよ。ファイナルに私が久しぶりに笑みを漏らしましたよ…。13センチピンヒールで人魚姫のように痛んでいた足も我慢できましたよ。
今回はわりかし本音で言います。
ありがとう。
おやすみ。棺(後ろの棺が私の寝具)に入りまする。
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